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木型工房から見た風景を書き記します!
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06/11
ヴィトン・カッター
今から10年程前に娘とシンガポールに行った。短大卒業旅行時期によりによって父親と行くと言う事でかなり抵抗されたが、結局
「お父さんと行くと思うからいやなのやから、お財布と行くのだと思えばええやろ!」
とゆう友人のアドバイスに納得して、行ってくれる事になった。

 飛行機に乗り、当然のように窓際に娘が座り、しばらく飛んだ後
「お父さん、あの島はどこやっ?」
と聞くから
「オーあれはおまえ沖縄ジャー」
と答える。
とその直後にスチュワーデスの機内放送が始まった。
「皆様当機は只今台湾上空を通過中でございます。」
その瞬間に父親の威厳は無くなった。

  シンガポールのホテルに着き、部屋に入った瞬間娘が目をむき騒ぎ出した。旅行社の係りの人が、苗字が一緒で名前が男女だから勝手に夫婦と思い込み、ダブルベットの部屋を用意していたのだった。騒ぎを聞き、すぐに添乗員が飛んで来た。
「すみません、明日は部屋を変えますから、今夜だけお嬢さん辛抱してね!」
「おとうさんやお風呂で寝ーよ!すかんのやけん。」
 またまた騒ぎを聞きつけたホテルマンが、急ぎツインの部屋を用意してくれた。
「これでええやろ?」
「うん。」

 そこで次の日にショッピングに出かけ、旅行かばんともう一個小さい男性用セカンドバックを買った。そのヴィトンのセカンドバックはその後10年間何かと携行して、ある意味、身体の一部のようになっていた。
 耐久性は驚くほどだった。一生いけるのではないかと思っていた。


 そのバックを昨年12月の忘年会で落としてしまった。
 近くの料理屋でその会はあったので、孫ベーを乗せる為の赤ちゃん用のサドルがついた自転車で出かけた。
 気持ちよく飲んで散会となり、帰り際にその自転車の荷物籠にバックを放り込んだ。と思っていたのだが、夜の事、又飲んでいたので実際は荷物籠とくっついてセットされている赤ちゃん用のサドルの中に放り込んだのだった。

 周囲四方がすっぽり囲まれているように見えるが、実際は足を出すスペースがぎりぎりバックが零れ落ちる程度の隙間として開いていた。
 バウンドした弾みに滑ったのだろうが、その時の雑踏の騒音で零れ落ちた音は耳に入らなかった。気が付いて探したが結局見つからなかった。


 それからバックの無い生活が始まった。

 どうにも手持ち無沙汰で仕方が無い。それとあまり長い期間持たない生活が続くと、又持ちなれない状態になり、置忘れする可能性が発生するので、同じ物を買う事に決めた。
 高松の三越デパートに隣接した所にヴィトンの専門店がある。そこへ家族に買いに行ってもらった。やがて電話の先で、
「あの前のと同じ20センチ程の大きさのバックはすでに製造中止になってもう無いそうや」
と言う。
「現行は23センチ程で幅も厚みもすべて大きいよ。」
「前のと同じ品物は出来ないのか」
と聞いてもらうと、
「オーダーも受け承りますが料金は丁度倍で12万円ほどかかります。」
との返事。

 客層が高いから係の人としては当たり前のリアクション。こちらはそのレベルとは全く違う。
 もたもた言うのが死ぬほどつらい性格だから
「ええわっ!その大きいので良いよ。」
と返事した。
 かくして二代目が我が家に来る事になった。

 値上がり直前だったのでほぼ税込み6万円程だった。思えば中に入っていた車のリモコンキーの修復にも二個で4万円程かかっている。少々の現金と合わせたらずいぶんな落し物だったなーと考えながらバックをしげしげと見た。

 大きいっ。

 少しでも余分な大きさの物を嫌う私には耐えられない大きさ。手提げのグリップも前のより長い。耐えられない、このグリップでもなくなれば少しは小さく感じるかと思った。

 次の日に思い余ってカッターでギリギリ切った。
 きれいなヴィトンの紋様を見ながら
「このグリップだけでも高くついているのだろうな」
と思った。

 それでもぶくぶくとしまりが無い。到底好きになれない。
 益々嫌いになった。

 そうこうしている時、さるデパートで、ヴィトンばかりの中古品フェアーの宣伝が出た。家族がまた見に行った。

 電話が鳴った。
「あるあるあるっ、あの小さいバックが出ている。38000円で!かなり使っているがきれいに磨いている。」

 そんな報告を聞くと脳みそが波打った。


 その話を友人にすると彼が裏技を教えてくれた。
 その買ったばかりのバックを入質してそのまま流せば良い。そのお金で小さいのを買えばいいと。

 でも私のバックには手提げのグリップが無い。売れないでしょ。付属の説明書も全部新品なのに、悔しい。
 せめてこれを買う前にこのフェアーがあったら良かった。
 この日までグリップを切らなければよかった。そう思うと落としたことから廃番になった事までが恨めしく思われた。


 そんなある日、ある会に行くと私のすぐ横に座った今度議員選挙に出る、と言う人がなんとその思い出の小さいほうのバックを持っていた。
「うっ!」
両の目が飛び出るのを二本の指で押し込んだ。

 そして偶然にも前に座っていた作曲家の人が大きいほうを持っていた。
「うわーっ。グーゼン!」
無論両方ともグリップはついている。

私はバックは持たずに行っておりました。
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